品種改良種、自然物、河川、人工知能といったモチーフを通して、自然と人為の境界への関心に基づく制作を行う石橋友也さん。採択されたのは、荒川水系の川辺で採集したゴミや自然物を素材に顕微鏡を制作し、その顕微鏡で荒川水系の水を観察するというプロジェクトです。年明けから岐阜県美術館でスタートした展覧会に今回のプロジェクトを出展した石橋さん。最終面談ではまずは展示の報告があり、その完成度にアドバイザーは驚きの声を上げました。そして今後の展開や成果発表イベントについて、また科学と芸術の間で活動するクリエイターの作家性について議論が交わされました。
アドバイザー:石橋素(エンジニア/アーティスト/ライゾマティクス)/森田菜絵(企画・プロデューサー)
最終面談:2025年1月17日(金)
科学と芸術の間で探る新たな「話法」
展示に向け急ピッチで制作
石橋さんが参加する「IAMAS ARTIST FILE #10 繭/COCOON:技術から思考するエコロジー」が1月10日から岐阜県美術館でスタート。石橋さんはこの展示に向けてプロジェクトを急ピッチで進め、インスタレーションとしてまとめ上げました。初回面談で紹介した3つの方式の顕微鏡をそれぞれ自作し、顕微鏡と観察画像を並べて展示。加えて、プロジェクトの全容をまとめた6分の映像も制作しました。


映像はリサーチやフィールドワークのスライドからスタートし、顕微鏡を組み立て、石橋さんが顕微鏡を覗いて川の水やプレパラートを観察する様子、そして覗いた先で見えたものなどが順に映し出されます。組み立ての一場面には、ガラス片からガラス球をつくる作業も。それは中間面談ではまだかたちになっていなかった、単式顕微鏡のための小さな球体レンズです。「ガラスの加工はガラス職人に依頼した。中間面談以降に行った制作としてはそれが大きく、あとは顕微鏡を組み立て観察し、映像制作や展示準備を行った」と石橋さん。
また展示の設営時には照明付きの展示台を急遽制作したといいます。自作ケースは光源が内側に仕込まれているため外からのライティングが不要で、光の反射が少なく、中の顕微鏡がきれいに見えています。
最終面談前に展示として完成を見せた様子に、アドバイザーからは「すごい」と驚きの声が上がりました。「見ることについての作品だからこそ、見せ方にもとてもこだわりがある」とアドバイザーの森田菜絵さん。完成度の高い展示を評価しました。

思慮深さと根源への好奇心
今後の展開について、引き続き議論が交わされました。石橋さんはプロジェクトの強度を上げるため、より特色のある河川を選択したり、顕微鏡の手法を絞ったりといったことも検討しているといいます。加えて自身の作家性をどう見出していくべきか、過去の作品も紹介しながらアドバイスを求めました。
今回のプロジェクトについて、「まだ本気のユーチューバーには勝てていない」という石橋さん。その言葉を森田さんが掘り下げます。石橋さんは「理系的なものづくりの誠実さと芸術的な余白のある見せ方との葛藤が自分の中にずっとあり、ユーチューバーを意識しているのはおそらく理系の自分。科学系のユーチューバーなら、顕微鏡制作をもっと自分の手でやりこんでいるだろうという気持ちがある」と吐露しました。
森田さんは「どちらかに偏って突き抜けるという感じではなく、バランスがよく思慮深い。二つの間での揺れも含めて石橋さんの作家性なのでは」と、科学と芸術両方の感性を持つからこその石橋さんの独自性を説きます。アドバイザーの石橋素さんは「よくわからないまま科学技術を便利に使っている人が多いなか、石橋さんはわからないままにしない。根源への知的好奇心をないがしろにせず探求する姿勢は、誰もが持っているわけではない」と、石橋さんが物事に向き合う姿勢そのものに作家性があることを示唆しました。

映像制作を通して見えた「話法」
二人からの言葉を受け、石橋さんは展示に向けて制作した映像について振り返りました。「ドキュメント映像をつくるのはかなり久しぶり。事実を撮影して多少物語を加えながらまとめる作業は自分の根底にある手法だと感じた」と、つくることで新たな手ごたえを得たと言います。森田さんは石橋さんの映像が持つオリジナリティに言及。「今では一般的な科学教育系の番組は、元々は教室のテレビでみんなで見ることを意識してつくられていたり、遡ると『科学映画』と呼ばれるものは、自然現象をいきいきとした映像と物語性で伝えようと試みるなど、それぞれに独自の話法がある。その文脈で見ても石橋さんの映像はテンポ感や視点などが独特で、独自の話法があると感じた。オリジナリティはさまざまなアウトプットをする中で見えてくるのかも」と、手を動かすことが作家性を見出すことにつながるという、作家の気づきを後押ししました。
2月の成果発表イベントは開催中の展覧会と重なるため、違う見せ方を検討する必要があります。石橋素さんは「展覧会とはまた違う場として活用するといい。ワークショップをしたり、素材をたくさん並べたりするのも面白そう」と提案。石橋さんも「美術館では水がNGで、鑑賞者に顕微鏡を覗いてもらえていない。実際に覗いてもらうなど、より実験的な場にできたら」と意欲を見せました。
TO BE CONTINUED…
成果発表イベントでのプロジェクトの見せ方を検討。見つけた「話法」をさらに探求する。