まちだリなさんは体の自由が徐々に失われていく難病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や自身の吃音から着想した新作の制作を進めています。初回面談ではコンセプトの方向性に関わる部分についての議論に時間が割かれましたが、インスタレーション作品としての方向性が固まり、最終面談では具体的なやりとりが行われました。当事者への取材やパフォーマンスといったまちださんにとって多くのチャレンジが含まれるプロジェクトに対し、アドバイザーが助言を行います。
アドバイザー:庄野祐輔(編集者/キュレーター/デザイナー)/モンノカヅエ(映像作家/XRクリエイター/TOCHKA)
最終面談:2026年1月22日(木)
自らの身体と試行錯誤しながら向き合う
初めての取材にどう取り組むか
初回面談では作品形式がそこまで定まっていなかったまちださんですが、中間面談では呼気で曇らせた窓ガラスに指で図像を描き、それをコマ撮りしたものをガラス面に投影するというインスタレーション形式で制作することが発表されました。そして今回の最終面談の冒頭では、家族がALSだったことから構想が始められた作品のパーソナルな性格も関係し、それまで難色を示していた当事者への取材を行うことが明かされました。それは中間面談でのアドバイザーの後押しだけではなく、実際に当事者と交流を持ったことも影響しているようです。
「中間面談から展示方法については大きな変更はないんですが、今回の支援に同じく採択されている伊藤道史さんの紹介で、ALSの相談会に参加させていただきました。そのときとても印象的な当事者の方に出会いました。その方はネットを使って自分から発信もされていて、すごい前向きなんです。当事者も家族も前向きであり続けるのはとても難しいので、とても驚きました。なのでお願いをしまして、今度取材にうかがう予定です」。
こういった取材を初めて行うまちださん。素材は制作するアニメーションに使う可能性はあるとしながらも、それよりも関係性構築に重きを置きたいと話します。そのため、インタビュイーにも配慮して小型のカメラのみで現場入りする予定であると話し、アドバイザーに意見を求めます。
それを受けアドバイザーのモンノカヅエさんは、予算が許すのであればカメラマンをつけたほうがいいのではないかと進言します。「カメラマンの方は気配を消すのが上手なので、あまり気にし過ぎる必要はないと思います。むしろカメラに慣れてないとあたふたしてしまうほうが良くない。ちゃんとした絵で撮ってくれますし、意外と落とし穴になるのは音声です。後から録れていなかったということも起こり得ます。なのでご自分でやる場合は、準備やテストを行ってから臨んだ方が良いと思います」。それに続けモンノさんは、取材対象と素材の使用について、契約書などで相互に確認する必要性も付け加えました。同じくアドバイザーの庄野祐輔さんも、自身の取材経験を踏まえ、自分の視点を忘れないようにすることが大切だと助言しました。

個展に向けて
次にまちださんは2月の成果発表イベントとその後予定している個展について話します。「成果発表イベントでの展示イメージとしては、制作で使用したガラスを置いて、そこに取材映像をもとにした映像を投影するつもりです。ギリギリのスケジュールになってしまうのですが、山梨のGASBON METABOLISMに滞在し、制作した映像をそこで展示できればと思っています。取材する当事者の方が文字盤で会話する方なので、そういった速度感を映像にも反映させたいと考えています。今年の夏か、来年には個展を行う予定です」。

そして、個展では制作行為を、パフォーマンスとしても見せることに挑戦したいと続けます。「想像ですがパフォーマンスをやることによって、体を動かす範囲が大きくなるんだろうなと。それこそ撮影した実写とドローイングを両方使って、組み合わせたり、支持体のサイズも大きくしたり色々と試して、その結果自分が変わっていければいいなと思ってます」。
まちださんの計画を聞き、モンノさんは肯定的に受け止めつつ、参考になりそうなアーティストのリファレンスを共有します。また庄野さんは、作品とパフォーマンスを並置すると、メイキングのように見えてしまうことがあると注意点を伝えました。

作品の「完成」を決めない
即興的な余地を残しつつプロジェクトを練ってきたまちださん。その作品としての「完成」について次のように述べます。
「この作品は2026年中に一度展示をする予定でますが、そこで完成という考えではありません。やり続けて、積み重なって、今後形態を変えて発表するのもありかもしれません。映画の場合は、1本完成させて、プレミア公開したら変更が基本的にはできません。でも展示やパフォーマンスであれば、そうじゃなくてもいいということを今はポジティブに感じています」。
庄野さんもこれに対し「また違うアイデアが出てくるかもしれないし、自分が進化する過程で新しい試みをすればいい」と肯定します。モンノさんも「作家としてどうやって生きていくかを考えてつくれるといいかなって思います」とそれに同意しました。
面談の終盤では今後のレジデンス予定や、制作の方向性についても教えてくれたまちださん。自らの身体を起点としたその取り組みが、今後どのように展開するのか楽しみになる最終面談でした。

→TO BE CONTINUED…
取材、滞在制作を経て、成果発表イベントと個展での展示/パフォーマンスに取り組む