ぬQさんは、人間の生命の輝きを3秒に圧縮したものを、3分にクローズアップしたというアニメーション作品『サイシュ〜ワ』を制作します。前回の初回面談では1分を目標にアニメーションをつくること、音のイメージを固めてくることが課題となっていました。
ぬQさんのアドバイザーを担当するのは、マンガ家のタナカカツキ氏とアニメーション作家の野村辰寿氏です。
絵から立体、立体からアニメーションに。
ぬQ:夏の間、京都のアトリエでずっと頑張っていました。日誌は私のホームページにも載せています。今も『サイシュ〜ワ』の作画と並行してクライアントワークもつくっていて、『サイシュ〜ワ』で彫刻家の友人に立体を作ってもらい、それをもとに描こうと考えていましたが、まずはクライアントワークの方でこの手法を取り入れようと考えています。
ぬQ:このように立体をいろいろな角度から撮影してアニメーションに反映させます。自分の描画から立体化してもらっているから、自分らしくもあり自分ではできない立体感があると思って取り入れたいなと考えています。
野村辰寿(以下野村):これは三面図を渡して立体化してもらっているの?
ぬQ:はい、三面図です。この友人は私の作品を好きでいてくれていて、私の作品のことをよく分かったうえで作りかえてくれます。
野村:今回は前作『ニュ〜東京音頭』よりも描写の精度は上げているのかな。
ぬQ:はい、上げています。ただ、実際には作業が追いつかなくなってきたので、立体の力に頼り始めています。
野村:なぜ聞いたかというと、立体を多角度から撮影したものから描くと、きっちりリアルな動きになってしまうから、伸びたり縮んだりというような『ニュ〜東京音頭』のような面白さが減っちゃうかなとも思います。
音楽の使用について
―ここで制作中の『サイシュ〜ワ』に仮の音をつけたものを再生して、アドバイザーとともに視聴しながら音楽のイメージについて話が進みました。
ぬQ:作品に使う音楽のイメージが固まってきました。最初は物悲しい曲からはじまって、パレードの様な曲につづいてバーンとはじけて。最後は「毎日が夏休みだったらいいのになー」って、軽快なこの曲を使いたい。このバンドは最初から予定していた友人のバンドで、曲もコンセプトに合っています。ちょっと間が抜けた感じが良いと思っています。
野村:メジャーで出ているバンドだよね。二次使用など、いずれDVDに出したりすることも考えて話をする必要が出てくると思う。海外のフェスティバルに出しますとか。アニメーションに使用することで宣伝と思ってくれて、双方にとってメリットがあると良いね。
成果プレゼンテーションにむけて
タナカカツキ(以下カツキ):アニメの作画は、ぬQさんがやりまくるという感じですかね。次回の最終面談の目標はなんでしたっけ?
ぬQ:今月末にクライアントワークが終わる予定で、それ以降は『サイシュ〜ワ』だけに集中したいです。
カツキ:すると、2月の成果プレゼンテーションでは完成している予定?
ぬQ:完成は3月の個展を目指しています。2月のプレゼンテーションでは7割から8割までいきたいです。
野村:成果プレゼンテーションでは予告編を見せましょう。全部見せる必要はないからね。成果プレゼンテーションにはいろんなお客さんが見に来ますよね。
カツキ:成果プレゼンテーションでは、ぬQさんの制作工程の話とか、リアルな話が聞けたらいいですね。今回、場所を変えて制作するということが面白いじゃないですか。それが作品とどれくらい関係があるのか。なんで良かったのか、気持ちのあり方とか、そういうことを普段から意識してもらえると発表が面白いかなと思います。すごく進んだということより、じゃあなんで進んだのかという話ができるといいですね。
ぬQ:そうですよね。京都アトリエでの作業では新しいものが無理矢理にでも入ってきました。夏に京都で作業ができて本当に良かったと思います。京都での話はいっぱいあります。
京都アトリエでの制作
ぬQ:京都での制作は本当に効果的で感動しました。制作中のある日、「京都で撮影するから会いませんか?」と最後の手段さんから連絡をもらって会いました。タナカカツキさんとお話ししたことがきっかけで連絡くださったようで。
カツキ:そうそう。最後の手段に「ぬQと話してみたら?」と言ってみたからね。
ぬQ:お互い普段は東京にいても会わないわけで。偶然にお互いが京都にいたので会えて感動しました。
カツキ:よかったね、京都に行って。
野村:自分も広島のフェスティバルに行く途中に、京都に教え子たちが働いているのでちょっと飲むかと言ったら、ちょうどぬQも京都にいますっていうね。
ぬQ:みんなといるといっぱいお酒を飲んで寝てしまうので、その日は制作に支障がでないように、居酒屋まで自転車で行ったんです。そうしたら、自転車が撤去されてしまいました。
カツキ:もうそれは飲むしかないよね(笑)。
ぬQ:京都は街並みの景観に気をつけているんですね。翌日には東京へ帰らなきゃいけないのに、朝から自転車の保管所まで行きました。京都での最後の思い出は自転車保管所でした。
野村:それもアニメのネタになるんじゃないの。
ぬQ:そうなんです。消える自転車を『サイシュ〜ワ』に登場させます。
正確さとラフさのバランス
野村 立体から描き起こすことっていうのは、ぐにょぐにょ回転させていくのが難しいからコマドリして撮影してってことだよね。そうしたら作画のガイドとして形が狂うこともないからペースアップしていくという目論見だよね。立体の制作のほかに、別に描く方も手伝ってもらう予定だよね?
ぬQ 仕上げですね。ごみ取りとかそういう作業は人に任せていいかなと。
野村 そういう方法をこれから拡張していく必要はあるね。中割は自分でやっているの?
ぬQ 自分でやっています。正確にやってくれるから良いということでもなくて、ちょっと正確じゃないところも自分の味だと思うので。かといって、下手すぎると違うから、その塩梅でなるべく自分でやっています。
―音楽のイメージも固まり、『サイシュ〜ワ』の制作環境が固まりつつあるぬQさん。次回の面談にむけて制作が加速します。