数十万本のピンの影が織りなす独特な陰影表現が魅力のピンスクリーン。宮嶋龍太郎さんは、精度の高い国産ピンスクリーンの開発と、それを用いた短編アニメーションの制作に取り組んでいます。最後の面談となったこの日は、装置の開発状況や展示、そして制作中の新作『RETURN』をめぐって意見交換がなされました。ピンスクリーンの開発や、アニメーションの物語内容はどのように完成へと向かっていくのでしょうか。
アドバイザー:米光一成(ゲーム作家)/若見ありさ(アニメーション作家/東京造形大学准教授)
最終面談:2026年1月16日(金)
ピンスクリーンという技法と感情表現をめぐって
ピンスクリーン開発の進捗について
アレクサンドル・アレクセイエフの『禿山の一夜』(1933)などに使用されているピンスクリーンは、装置の台の部分に数十万のピンを刺し、それの押し引きで諧調を作っていく表現です。
宮嶋さんは最終面談に臨むにあたって、試作した装置の一部に針を刺したものを持参しました。台の部分はミリ単位で正確に穴を開けなければならないため、台の制作に穴を開けるためのドリルからつくるなど、業者とのやりとりが難航している状況を説明。複数の企業とやり取りを続けていることを明かします。
面談ではアドバイザーの若見ありささん、米光一成さんが宮嶋さんの持ってきた試作品に針を差し込んでみるという一幕も。米光さんは、「実際に触ってみるとピンの高低差で濃淡が生まれることが分かるから、実際にこれを使って絵を描きたくなっちゃいますね」と興味津々。若見さんは装置に針を刺しながら、膨大な数の針をセットしなければならないピンスクリーンの開発が、いかに大変な作業かを実感していました。その上で装置としての面白さを、成果発表イベントや展示を通して一般の方にも伝えられないかと宮嶋さんに投げかけます。


体験して伝わる魅力
これを受け宮嶋さんは、2月の成果発表イベントの展示計画を話してくれました。「開発中のピンスクリーンは成果発表イベントに間に合わないので、今日持ってきているものと、自分がメインで使っているものを展示しようと思っています。在廊日にはピンスクリーンに触ってもらうということも考えています」。
また、3月にも個展が予定されており、これについても宮嶋さんはプランを明かします。「ここでも現状メインのピンスクリーンと、模型を持ち込んで、資料映像とともに提示しようと考えています。模型は比較的安価なので、触ってもらうのもいいかもしれません。そのころには針も届いていると思うので、セットされていない状態の針もアクリル台の中に敷き詰めて展示するつもりです。ピンスクリーンがどういうものかの解説は、ポートフォリオなどで補完するつもりです」。
若見さんは装置に触ってもらうというアイデアに賛同を示しつつ、「ピンスクリーンはアニメーションに興味がある人は知っていますが、それ以外の人は知らないものなので、それがわかりやすく、かつ宮嶋さんがどう展開しようとしているのかが見えてくると良い」とコメントしました。

感情表現をどうするか
面談終盤に話題となったのは、並行して制作が進められているアニメーション『RETURN』についてでした。この遺伝子編集を重ねられた人類が存在するSF的設定について、作品の前半でその世界観を観客にどう伝えるかを宮嶋さんはアドバイザーに相談します。
「遺伝子編集が重ねられる過程では、編集され過ぎた人間も存在します。その人間が抱えていた『痛み』のようなものが前提にあるのですが、それを表現として作品に入れたいと思っています。ただ自分はこれまで感情を描くというより佇まいで表現してきたので、ありがちな表現に頼らずにやっていきたいと思っています」と宮嶋さんは現状の目標を語ります。
米光さんは「説明になっちゃうとつまらない。つくりたいところからバーンと始めたほうが見る側も表現として受け取れると思う」とアドバイスを送ります。若見さんも「宮嶋さんは流れるような時間の変化を描くことができるので、説明的じゃなくても、流れとして描けば合うと思います」と、作風を踏まえ応答しました。
子どものころに日本からインドネシアのバリに移り住んだ宮嶋さん。そんな都市から自然豊かな環境へ移住した際に感じたギャップも物語構造に反映しつつ、ピンスクリーンによって制作されるアニメーションは、どのような作品に仕上がるのでしょうか。
→TO BE CONTINUED…
成果発表イベントと個展の展示プランを決定し、ピンスクリーンの開発、およびアニメーションの制作を進める