使われなくなった祖父母の小屋を建築メディアアートとして再構成する泉田剛さんの「Texture Displaced 解体による建築的モデルとマテリアルのズレ」。プロジェクトはすでに2025年の11月末から12月にかけての個展で発表され、次のフェーズに移り変わるタイミングで最終面談は行われました。泉田さんのイメージをどのように展開していくかについては、これまでの面談でも話題になっていましたが、個展を経てさらに議論が具体的になった様子です。
アドバイザー:石橋素(エンジニア/アーティスト/ライゾマティクス)/織田笑里(404 Not Found ジェネラルマネージャー/チョコとマシュマロ合同会社代表)
最終面談:2026年1月15日(木)
いかにしてライフワークとしての継続性を作るのか
展示の成果と見えてきた課題
青森県立美術館で「解体と記憶 人のあとに続く風景—泉田剛展」を開催した泉田さん。個展では、解体した小屋を立体として再構成した作品のまわりに写真や模型などの資料を取り囲み、会場を構成しました。展示を通じて見えてきた課題や、来場者の反応を中心に泉田さんから報告が行われます。
「今回会場構成のリファレンスにしたのは、石を環状に配置した古代の遺構として知られる、環状列石でした。青森には小牧野遺跡という同様の配置を持つ遺跡があるのですが、偶然にもその遺跡を研究されている方が来てくれました。環状列石は中心に組石があるのですが、それと展示されていた立体を関連させた専門性を踏まえた感想をいただきました。また、来てくれた人の何人かが『うちにも使ってない小屋がある』と言ってくれて関係も広げることができました」。
このような展示の成果の一方で、泉田さんは浮上してきた課題について言及します。「来場者や記録映像を見た人から、立体の中には入れないのかという質問がありました。ランプシェードのようなものを吊るすなど、内部に対して意味づけを与えるようなアイデアもあるのですが、こういった声が出てくるのは、作品がまだ仕上がっていないということでもあるのかなと思います」。
これに対してアドバイザーの石橋素さんと織田笑里さんは、中を見たいという反応があったのは小屋がそもそも中に入れるものであることも関係しているのではないかと応答します。
個展を経て、自分の作品がどう見られるかについてより解像度が高まった様子の泉田さん。小屋の解体を通じ再解釈される場所の記憶や物語というウェットな部分と、人口減少社会における建築の活用というロジックの部分をどうチューニングしていくのかを今後考えなくてはいけないと冒頭のプレゼンテーションを締めくくりました。

クライアントワークか自主制作か
展示というステップを経て、プロジェクトは今後どのような方向に向かってくのでしょうか。織田さんは作品を購入してもらい、次の制作につなげるというアートのオーソドックスなスキームとは別の方向を望んでいるのではないかと泉田さんに問います。
「確かにアーティストとしてはアートシーンに入っていきたいというより、元々あった課題にアート的な要素を使って解決することが僕の中で大事なことです。解体する費用がない空家を作品にして、アート市場のお金が、お金のない場所に回ってくるみたいな流れが実現したら一番嬉しいです。それもあって小さい作品や模型をつくったりしています」と泉田さんは自身の理想を語ります。
織田さんはそれに対し「再開発の際、元々あった建物を解体して大型商業施設を建てるような時に、そこで解体した素材を新しい施設の中の壁面の一部などに使うこともありますよね。最近は企業もアートに対する関心、理解のあるところが増えています。ただそういう形のプロジェクトになると、先ほどお話された地方の課題解決には繋がりづらいと思うので、自分がやりたいかどうかという気持ちの部分は大切だと思います」と応答しました。
石橋さんは今後の展開について「マネタイズとして企業とやっていくのは手法としてあると思いますが、まだ1回しか展示していない状態でクライアントワークに移行するのではなく、自主的なプロジェクトがあと数例あると良いと思います」と言います。いくつか事例が積み重なれば、作品の共通点を通じてコンセプトが伝わりやすくなるのではないかとアドバイスを送りました。

ライフワークにするために
面談終盤の話題は、今後どのように制作の時間とお金を確保するのかというサバイブに関するものになりました。活動の仕方を模索する泉田さんは、他のアーティストがどのようにそれらを工面しているのかアドバイザーに質問します。それを受け織田さんは、キャリアの浅いうちは行政や財団の助成を活用したり、公募を受け付けている芸術祭などで経験を積み、自分なりのベースを固めていくというルートを示しました。石橋さんは別で映像制作などをしながら、自身の活動を続けるという選択もあると述べながら「5年後に作家として独立すると決めて、その期間に足りないスキルを学ぶために会社やチームに入るというやり方もあると思う」と付け加えます。
支援期間が終わった後も続くキャリア。その相談にアドバイザーが真摯に寄り添っていることが印象的な最終面談でした。

→TO BE CONTINUED…
自主的な活動とクライアントワークの両者を視野に入れながら、継続的な活動の可能性を探る