ロマンとシニカルを混ぜ合わせたような作風で、手描きアニメーションを制作する鉄崎凌大さん。大学院で制作した『あしたのさんぽ』は、iPadでの体験を想定した、アニメーションとマンガ、両方の特性を持ち合わせた「スクロールアニメーション」作品です。本プロジェクトを通して、国を問わずより多くの人が体験できるプレゼンテーションの場の創出を目指します。最終面談では、本作品とゲームジャンルの親和性や成果発表イベントでの効果的な伝え方について議論を交わしました。

アドバイザー:さやわか(批評家/マンガ原作者)/モンノカヅエ(映像作家/XRクリエイター/TOCHKA)

最終面談:2026年1月23日(金)

リーチの広げ方

ウェブサイトの構造が決まり、現在は実装と細部の調整を行っているところだと話す鉄崎さん。「ウェブサイトのコンセプトは中間面談の時から大きく変えず、アニメーションと音楽のグルーブ感をインタラクティブに体験することに焦点を当てたい。ウェブサイトは『滞在する』『潜む』といった感覚で体験してほしい」と話しました。鑑賞者が想像力を働かせられるような余白を残すことで、その人なりのイラスト空間が生まれ、滞在する感覚やまた見たくなる感覚につながればと話しました。

初回面談時からの課題だったリーチについては、動画を作成し、動画そのものも作品としてウェブサイトと並列に展開していく予定です。動画をYouTubeやTikTokで上げ、SNSで発信・拡散していくイメージだと話します。音楽は単体で発信し、書籍やグッズ開発にも取り組む予定です。それぞれの発信を通じて総合的に世界観を伝えていきたいと話しました。成果発表イベントでは、サイト内のホーム画面を立体にしたようなインスタレーションを検討中です。

ウェブサイトのホーム画面から各コンテンツへ遷移できる設計を予定

アドバイザーのモンノカヅエさんは、リーチを広げる方法の一つとして、世界観の合うミュージシャンを探し、コラボレーションすることもできると話しました。また、成果発表イベントのインスタレーションと本作品で伝えたいことの関連性の薄さについても指摘し、「没入感を生み出すためにプロジェクションマッピングも検討してみては」と提案します。

さやわかさんは、「滞在する」「潜むイラスト空間」という視点が新たに加わったことを受け、展開そのものも潜んでしまわないように注意してほしいと述べました。

モンノさんと意見を交わす鉄崎さん

ゲームショーへの展開

今回の作品でやりたいことを改めて振り返る鉄崎さん。「疲れた時や大事なものを確認したい時に、好きな映画や絵本、漫画を見返したくなる。その時にそれらのコンテンツに対して感じる魅力を自分で今、作ろうとしている」と話します。

ディスカッションを交わすなかでモンノさんは、「ウェブでの発信が中心になるのは少しもったいない。インディーゲームなどのゲームショーやSteamに出すといいのでは」と話しました。そうした場では、プレイした人からの感想を直接伝えてもらいやすいと話します。さやわかさんも同調しながら「ローファイ・ヒップホップが盛り上がって以来、ゲームがチルアウトみたいな表現の作品に開かれていっている。本作品はインタラクションのある作品なので、そういう世界観が好きな人たちがたくさんプレイしてくれるはずだ」と話します。さらに「疲れた人がどう作品にアクセスするかと考えたら、例えば布団の中で見るとか。そういう時にウェブサイトが適切なのかどうか。そこから展開を考えても良い」と助言しました。

さやわかさん

成果発表イベントと、その先に向けて

モンノさんは「『潜むとは何か』をもう少し鉄崎さんのなかで整理し、成果発表イベントではコンセプトをシンプルに伝えることに注力した方が良いのでは。その先の中長期的な目線で言うと、Steamやゲームショー向けに動いていくと、いい反応が得られると思う」と話しました。また、書籍化するにしてもインディーのブックフェアに足を運んで、人々に直接評価してもらった方が、自分の作品の世界観を伝えていきやすいのではないかと話しました。

鉄崎さんは、アドバイザーの意見を聞いて、改めてゲームへの展開を検討したいと話します。その上で「ゲーム性がないと受け入れられないと勝手に想像していた。ゲームのファンは、世界観をインタラクティブに味わいたいという心理もあるのだろうか」と尋ねます。アドバイザーは2人ともその通りだと回答。さやわかさんは「遊びたい人は遊べるゲームをやる。そういう方向性だけでなく、何も起きないものをただ眺めるだけの作品や、デスクトップアクセサリーなどにもゲームの世界は広がっている」と付け加えました。