広島県出身の西原美彩さんは、広島の各地に伝わる民俗芸能、神楽をモチーフとしたアニメーション作品を制作しています。本プロジェクトでは県南西部に伝わる十二神祇神楽の演目「八つ花の舞」をモチーフに、5分の短編アニメーション作品『やつはな』を制作します。最終面談では、舞の重要なシーンを描くに当たって複数の視点を一つの画面に入れる試みが報告され、これから作画を進めるときに気をつけたい点などを話しました。

アドバイザー:原久子(大阪電気通信大学総合情報学部教授)、モンノカヅエ(映像作家/XRクリエイター/TOCHKA)

最終面談:2026年1月22日(木)

複数の視点を一つの画面に入れる

西原さんは広島からzoomで参加しました。互いの刀を持ち合い輪になって舞う「八つ花の舞」のシーンについて、カメラを固定しロトスコープすると迫力が不足する点が前回までの課題でした。それに対し西原さんは、現在ロトスコープから手描きの作画を起こす予定だと報告しました。また、4兄弟にそれぞれテーマとなる色を割り当てる考えです。
複数の視点を同じ画面に入れるに当たって、ジョルジョ・デ・キリコ「街の神秘と憂鬱」を参考に、複数の消失点を設定したいと話します。

また、作品全体の絵づくりをグラフで分析した西原さん。縦軸を「感情抑圧」と「感情表出」、横軸を「落ち着き」と「忙しい」とし、各シーンの絵を置いてバランスを把握しました。

いくつかのシーンを静止画で共有。西原さんは「今は場所などが特定できないようなさらっとした背景になっているので、もう少し分かるように描き込んでいきたい」と話しました。また、1月にイラストレーター/アニメーション作家の城井文さんにレビューを受けて、絵コンテの分かりにくかった部分を調整したことも報告しました。
1人から4人へと徐々に人数が増えていく「八つ花の舞」のシーンの視点の変化が、神楽の身体性を抽象化するときに効果的であるか。また、成果発表イベントは未完成の状態での展示となるため、何を最優先するべきかというのが現状の課題だと話しました。

「八つ花の舞」の場面の試作映像を見ながら面談を進めました。アドバイザーの原久子さんとモンノカヅエさんは、「八つ花の舞」の4兄弟の視点の変化が明確になったと言いました。原さんは、「神楽に関わる一人一人に目を向ける表現になったことで、神楽を継承するのは人、そしてコミュニティであることが分かりやすくなった。神楽を伝えていきたいという作品のテーマもより明確に伝わるようになった」と話しました。

モンノさんは「視点が複数あるというのは難しい作画で、苦労してここに辿り着いたことが伝わってきた。魅力的な絵づくりができている」と話します。今後さらに制作が進んで、中割りが入った後のアニメーションが出来上がるのが楽しみだと伝えました。

取材や構想のメモを含めた展示

面談の中盤では、成果発表イベントの内容についての意見交換を行いました。「壁にモニターを並置し、取材時に撮影した実際の神楽の映像と、本作品のショートバージョンを展示する予定」と話します。その手前の台には取材時の写真や資料、スケッチ、作品の資料を置く予定です。モンノさんは、見応えのある展示になるのではと期待を寄せました。

モンノさん

音について尋ねられた西原さんは、「成果発表イベントではアニメーションの方は無音で、BGMとして実際の神楽の音を流す予定だ」と伝えました。原さんは、変に取り繕って何かするよりはそのほうがいいのではないかと話し、モンノさんも「相当リサーチしているので、現場の音を聞いてもらうのはいいと思う」と話しました。

動きのあるシーンの中割り

西原さんは、現在の課題として中割りのあり方、特に動きをどれだけ滑らかにするかを決めかねていると言います。「一部のシーンに中割りをつけてみたところ、なんだかヌルヌルしている感じがした。1人の視点と複数の視点のシーンで、中割りやフレームレートを変える方法もあると考えているが、まだ構想段階だ」と話しました。

モンノさんは「ヌルっと動かす部分と間のコマを抜く部分の緩急を意識すると動きが生きてくるかもしれない」と話し、スイスのアニメーション作家ジョルジュ・シュヴィツゲベルの作品を参考例に挙げ、最小限のコマ数で視点移動しながら美しく見えるような方法を探ってみてはとアドバイスしました。
原さんは、中割りが、神楽の身体性を抽象化するときに効果的かどうかの判断基準にもつながるのではないかと話しました。西原さんは頷きながら「ぎこちなかった動きがだんだんと滑らかになっていくという案も考えている」と話し、手を動かしながら中割りのあり方を探っていきたいと話しました。
作品が完成したあとは、映画祭への出展を目指しつつ、まずは神楽のリサーチでお世話になった人々を招待して、地域の公民館などでの上映を目標として設定しています。

原さん