2022年の設立以来、4つのゲームを制作してきたインディーゲームスタジオ・HIHAHEHO Studio。制作の中心的役割を担うmgr allergen0024さんは「人それぞれ異なる知覚や感情を通じて世界を捉えている中で、安易に他者を否定することに問題意識を持つ」と言い、その問題意識が作品のコンセプトにつながっています。『swandive』は、立場の違いが生む「多様な真実」を複数の視点で描く4章構成のノベルゲームです。最終面談では、直近の制作で注力していたシナリオを中心に議論を交わし、プレーヤーを引き込むための構成について考えを深めました。
アドバイザー:米光一成(ゲーム作家)/西川美穂子(東京都美術館学芸員)
最終面談:2026年1月16日(金)
認知の違いをどのように見せるか
現実の風景や伝承をゲームに生かす
『swandive』の進捗についてHIHAHEHO Studioのmgr allergen0024さんは、PVとBGMを外注し制作を進めているところだと話しました。また、モデル地となる埼玉県秩父市と東京都八王子市で取材をしたとこのことです。

秩父では武甲山周辺を歩いて、石灰工場や住宅地、高校など1章の舞台の地理関係を確認したほか、地域に残る言い伝えなどをリサーチしました。「お地蔵様が行方不明になったという話や放火で廃墟となった小集落の話、それが祟りだという話などから、民俗的な信仰がある地域だということをあらためて感じた」と話しました。八王子では城跡や神社を歩き、3章の登場人物が住む場所の設定などを決めました。また、HIHAHEHO Studioエンジニアの平山遼さんは、中間面談後にゲームエンジンの作業を集中して進めたことを報告しました。
デモンストレーションを行い、新しく制作した1章のシーンを見ていきました。冒頭では3つのウィンドウによって山の見え方が3人それぞれ異なることを表現。「アサの家族が採掘の仕事をしていて、山肌が削られて白くなっていることはあまり意識してない。ヨルは中立的な立場なので普通に見えている。ユウは、山肌が削られている=傷ついているという認識で、血のような赤色に見えているものとして表現した」とmgr allergen0024さん。

「途中で登場人物の1人であるヨルが亡くなった時にウィンドウが消え、その後に新聞のような雰囲気で事件の概要が現れる。事件性が高そうだけどあえてしっかり書かずにぼやかすというか、真相が取り上げられないような世間の空気感を表現したい」と続けます。
以前の面談でも議論の中心となった複数のウィンドウの使い方については、案を多数考えてはいるものの、決めかねていると言います。まずはシナリオを実装し、その後にウィンドウの効果を考えていく予定です。
謎の出し方を考える
アドバイザーの2人は、シナリオを充実させたことや、ビジュアルの統一感を出したりウィンドウの使い方を工夫したりしたことで、作品の面白さがさらに増したと話しました。その中で米光さんは、山が違って見えるという画面は説明的になり過ぎているのではないかと懸念します。「もっと違っていても良いのでは。なぜこの人はこんな風に見えているのだろうかとプレーヤーに思わせたい」と、作品のテーマを踏まえて話しました。一方、西川さんは、画面が切り替わっていく中でこのシーンがそれほど説明的には見えないのではないかとも言います。
物語の導入ともなるこのシーンの表現について、HIHAHEHO Studioも難しさを感じていると話します。ゲーム中に謎めいた部分もつくりつつ、ここでは分かりやすさを重視したとのこと。
米光さんは、そうした意図を理解しながらも、見え方が異なることによる謎が序盤のほうにあるといいと言います。「立場の違いによって認知が異なるのかと思っていたら、実は本当に全然違うものを見ていたりだとか。合理的に説明できない違いを体感できるとリアリティが出てきて引き込まれるのでは。そこから新しいウィンドウの使い方も発想できるかもしれない」と話しました。西川さんも、「たまたま昨日誰かにこう言われたからこう思うというように、見え方の違いが生まれる要因は現実世界でもさまざまなものがありえる」と伝えました。

展示に向けて
成果発表イベントでは、iMacを2台置いて10分ほどの体験版を体験できるようにする予定です。
アドバイザーからは、ゲームを体験せずにプレイの様子を見たい人や、列に並んで待つ人が多数いることから、そうした人々が眺められるよう、制作資料なども展示するといいという助言がありました。米光さんは、「キャラクター設定も展示するといいかもしれない。プレイしてみたい人はプレイして面白さを体感できればいいし、やってない人も面白そうだから気にしとこうぐらいになったらいい」と話しました。
平山さんは「今までのイベントでも、緊張して遊びにくいから前の人が遊んでいる画面を見ようという感じの人も多かった。今回はモニターがそんなに小さくないので他の人がプレイしている画面を覗けそうだ」と話しました。そのほかに鑑賞者をサイトへ誘導するアイデアなども話しました。
→TO BE CONTINUED…
3月までに体験版を完成させる。その後はパブリッシャーを探して、ゲーム配信プラットフォームでの公開を目指す