令和2年度メディア芸術クリエイター育成支援事業「国内クリエイター創作支援プログラム」に採択された国内9組のクリエイターが、本事業で得たものについてコメントした映像を公開しました。
令和2年度の成果発表イベント「ENCOUNTERS」では、2021年3月5日(金)〜14日(日)の期間、東急プラザ銀座にて各プロジェクトの紹介展示をおこなっています。
〈プロジェクト紹介展示〉
会期:2021.3.5 FRI – 14 SUN(11:00 – 19:00)
会場:東急プラザ銀座 3F・4Fみゆき通り側エスカレーター横、10F・11Fパブリックスペース
主催:文化庁
協力:東急プラザ銀座
企画・運営:メディア芸術クリエイター育成支援事業事務局[CG-ARTS内]
入場無料
INDUSTRIAL JP
タナカ カツキ:
「工場からいい音出てる!」という切り口が気持ちいいですよね。工場=騒音という通念を覆す、それこそ痛快な音でぶっ壊してくれた企画です。私も家の前を通る大型トラックに、今の音いいなあと思う瞬間があって、それをもう一度理想的な音環境で聞けたら楽しいだろうなと思います。いつも身の周りの音を素材として捉えてる音楽家にとっては当たり前のことかもしれませんが、アーカイブとして残す、それらをシェアするという試みには価値があると思います。音を収穫する(レコーディング)する技術も進んでいると思います。今の時代を音で鮮明に言い表すこともできますね。さらにその音情報は工員さんにとって特別な意味を持つものとなるでしょうから、ぜひ継続していただき、ライブラリーを豊かなものにしていってほしいと思います。
土佐 尚子:
私は、INDUSTRIAL JPの曲を聴いた瞬間にファンになりました。立場上、今まで言いませんでしたが、自分の作品で、ぜひINDUSTRIAL JPの曲を使いたいと思ったほどです。ですから、あまり制限することなく、彼らが伸び伸びと仕事ができるような助言をしました。建設的な助言ができたのかどうかは、その結果を見れば、わかると思います。
日本の製造業といえば、Japan as Number 1と言われた80〜90年代が黄金期です。アーカイブとして残すことは、日本を励ますことにもなるのです。この時代を知らない現代の若者に音を通して、日本を再確認して、新たな音を作り、また新しい日本文化が生れてくることに期待しています。日本の町工場を元気にするINDUSTRIAL JPの皆さんの今後の活躍におおいに期待しています。
株式会社ねこにがし
磯部 洋子:
まるでイラストが動いているかのような二次元の世界と、対照的にリアリスティックなロトスコープ背景とが組み合わさって生まれた新しい世界観の魅力に引き込まれました。リアルな制作進行が難しい厳しいコロナ禍の状況下でも、SNSでの制作チーム募集からDiscordでのプロジェクト進行まで、次々に新しい方法論を柔軟に開拓することで、着実に作品づくりを進められてきた姿勢が心強く刺激をいただきました。この状況下であることを忘れさせてくれる作品に出会えるのを心から楽しみにしています。
和田 敏克:
川尻将由さんの傑作『ある日本の絵描き少年』を観てワクワクした。絵は描きたいから描くので、そもそも理由などないのだが、結局、絵は何を描いても、自分を描いているに等しい。好みはもちろん、品性やら人柄やらその人の歩みがすべて詰まっている。そしてアニメーションに至るや、何を動かしてもその動きは、動かした人そのものである。裸をさらすくらい、恥ずかしいほどにその人が表れる。絵とアニメーションのその特性を、演出として巧みに表現に組み込んで成功させた川尻さんは見事な人である。そして今回の『CHERRY AND VIRGIN』は長編として、そのワクワクを最大限に活かした画期的な映画なのだ。童貞の劇画調エロ漫画家と、処女のBLイラスト腐女子とのラブストーリー。といいながら、その実、現代に生きる我々の、恥ずかしいくらいピュアで純情な、品性を持った青春映画である。そしてさらに、この特別な面白さを持った手法で長編を実現させるため、資金のみならず、スタッフをも一般の「絵描き」たちから参加募集する試みを行いながら制作が進められている。進行体制の立ち上げはかなり大変だったようだが、しっかり進んできているとのこと。この新しい「参加型」の試みも注目すべきだし、まさにこの映画の成り立ちに相応しいと感じる。あとは完成と公開あるのみ!楽しみにしています。
Team Yuri Suzuki at Pentagram
《難読症の為の音楽:共感覚トイ Colour Chaser 量産プロジェクト》
磯部 洋子:
ユーザーに喜んでもらうこと、一人でも多くの方に大切に使ってもらうこと、価値を感じてもらえるものを生み出すことこそが目的となる量産の世界は、自己の表現を起点とするアートの世界とは、立脚点とベクトルが大きく異なります。ユーザーに価値があると感じてもらえるモノに昇華できなければ、世界に大量な不要品を増やし、地球に負荷をかけてしまうリスクがある。量産プロダクトの企画製造には、ギリギリまで突き詰めて受け手にとっての価値を磨き上げる意識や地球に対する責任感が必要となります。『Colour Chaser』が今後も磨き上げられ、多くのこどもたちにワクワクする遊びや発見創造する喜び、たくさんの笑顔をつくりだしてくれる愛される製品になることを願っています。
山本 加奈:
スズキユウリさんを知ったきっかけとなったアートプロジェクト『Colour Chaser』の企画を担当できることは、運命なのか偶然か、とても嬉しい出来事でした。しかも、アート作品をトイとして商品化し販売するという意義深いプロジェクトです。商品化をするということは、安全性、耐久性、市場の価格感を筐体に組み入れていく思考を必要とするだけでなく、筐体を制作するパートナー工場や販売網の決定、そしてプロモーションなど立体的に考えなくてはいけません。スズキさんにとってアーティストとして発揮してきた能力や才能を封じられ、全く別のスキルが求められるシチュエーションになったと思います。アート界におけるこうした試みは、欧米に比べて日本のクリエイターエコシステムに足りない領域ではないかと感じていました。このようなカタチで共有できるのは、多くのクリエイターの参考にもなるのではと期待しています。これからが本番となるプロジェクトですが成功をお祈りしています。