ゴッドスコーピオン、hnnhn、宮城恵祐、Rei Nakanishiさんの4名は、企画、コーダー、空間デザイナー、グラフィックデザイナーによるチーム。東京都渋谷区にあるオルタナティブスペース「渋家(シブハウス)」のメンバーとして、作品『VideoBomber』で第17回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門の審査委員会推薦作品に選出されました。今回採択された企画『Stricker(ストリッカー)』は、街中で見かける「ステッカー」のもつストリートカルチャーとしての側面に着目し、インターネット上でその交流を試みることを目的とした新しいコミュニケーションツールです。
アドバイザーを担当するのは、東京工芸大学芸術学部ゲーム学科教授、日本デジタルゲーム学会理事研究委員長の遠藤雅伸氏と、NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] 主任学芸員の畠中実氏です。
三つの基軸
hnnhn:『Stricker』は三つの基軸でつくられます。一つめはスマートフォンに対応したアプリケーション。二つめはウェブサイト。三つめは『Stricker』の象徴としての「ストリートゲットータワー」という名の造形物です。
宮城恵祐:ストリートゲットータワーについては、当初は板金屋さんに作ってもらうつもりだったが、軽量化を図るため自分たちで造作しようかと考えています。形は公共物を表すものをモチーフにしたい。
ゴッドスコーピオン(以下ゴスピ):ステッカーを個人間で交換できる機能をつけたいです。アプリでマップ上にステッカーを貼る行為は新しい地図記号のような役割を果たすようになります。例えばトイレの場所にそれを意味するステッカーを貼ることなど。また、ステッカーをタグで細分化することで、ウェブサイト上で、目的のステッカーだけを抽出したマップを作り出すことも出来ると思います。
遠藤雅伸(以下遠藤):機能があるのはいいんだけど、それを使うモチベーションをどうやって上げるかですね。
ゴスピ:ユーザーが作成したステッカーが地図上にビジュアライズされて、波及度を実感できるようになるので、それが魅力になるといいです。
遠藤:「波及」を実現するにはターゲット・ユーザーを明確にすることが大きな課題だと思う。例えば、僕がステッカーを作ったとして、誰が貼ってくれるのか。誰が伝播してくれるのか。ツールやサービスをつくる上で「伝播する為の計画」を明確にする必要があります。
―今回の企画では機能面を充実させることと同時に、それが誰に、どのように使われるのかを意識した上での作品制作が望まれます。作品を具体化するために何が重要であるか、議論が続きます。
どのようにビジュアライズするか
ゴスピ:今はインターネットがどんどん瞬間化しているように感じる。テキスト中心から写真中心に移っているような。そのときに、人がアウトプットするものは何が残るのか考えたときに、それは感情や感覚のようなものだと思っています。それをどうしたら実現できるかと考えています。
畠中実(以下畠中):この作品はビジュアルがとても大切になってくるので、アプリ、ウェブサイトそれぞれのビジュアルイメージを見たいですね。アプリやウェブサイトの制作については、開発に時間がかかるものなので、まずはアプリの「仕様書」を作成して開発計画を整えましょう。
遠藤:地図上にステッカーをただ「貼っていく」のではなくて、マーカーレスなAR(拡張現実)などもいいかもしれませんね。
作品のローカリティー
畠中:この企画はもっとローカリティーを意識したものかと思っていた。あれもできる、これもできると話を広げ過ぎているようにも思えるので、もう少しターゲットを絞ってもいいのかもしれませんね。広く大衆に向けたサービスをやるのだったら、既に巨大なサービスあるので、表現としては真逆の方向を追求していった方が面白いでしょう。
遠藤:いずれにせよ、使われ方をもっと考えよう。面白い機能があればみんな使ってくれるというのは幻想なので。とにかく使い方、使われ方をイメージしていかないと。あと、オープンにする情報とクローズにする情報の切り分けが重要ですね。
ゴスピ:今後はステッカーカルチャーの中心地でもある渋谷で、マップをもとにフィールドワークをしてみようと思います。作品のローカルな使い方については参考にしていきたいです。
遠藤:先行事例を把握して、そこにないものを入れていくことが大切です。
―そのほか、Strickerチームは制作場所の確保など、実制作の準備を整えています。中間面談では具体的なビジュアルイメージやアプリ、ウェブサイトの概要が報告される予定です。
Strickerによるストリートカルチャーとインターネットが交わる新しい表現に期待です。