岸裕真さんの『xoxo-skeleton』は、身体の情報をもとにLLM(大規模言語モデル)が独自に動作指示を生成し、AIが人間を操作するようなウェアラブルデバイスの開発に取り組むプロジェクトです。この最終面談では「内臓」というキーワードから発想されたインパクトある外観が新たに提示され、アドバイザーの2人を驚かせました。岸さんはそこに至った過程を丁寧に説明しつつ、成果発表イベント、そしてその後の展開についてもプランを述べ、制作の進行状況が共有されました。
アドバイザー:庄野祐輔(編集者/キュレーター/デザイナー)/原久子(大阪電気通信大学総合情報学部教授)
最終面談:2026年1月23日(金)
AIとの非言語的な対話に向かって
肋骨のなかに、内臓として入る
中間面談では四足歩行のイヌ型ロボットUnitree Go2の四肢を拡張したプロトタイプの開発について共有してくれた岸さん。この最終面談では、本番用デバイスがどのようなものになるのかをまず話してくれました。
「プロトタイプで最低限の機能チェックが出来たので、改めてデバイスをどうつくろうかと考えました。今回僕がやりたかったのは、これだけ多くの人がChatGPTなどのAIを活用し、モノを作っているなかで、そういった有用性の外側でAIと出会うことでした。そこで僕は、自分でチューニングした自然言語処理モデルMary GPTに情報を入れて、支離滅裂なテキストを出してもらいました。それを読みながら考えたのは、AIとの非言語的で、感性的な出会いの場として、大きな肋骨の中がいいんじゃないかと思ったんです。そこに自分が、内臓として入るイメージです」

なぜ内臓なのか。それについて岸さんは「内臓は言語を使えません。だから自分が内臓になって、かつ隣の内臓がAIだったら、それは言葉を介するものとは別の出会いになるんじゃないかと思った」と述べます。そしてチームのメンバーとスケッチやリサーチを重ね、肋骨の骨組みやドーム的な形状を連想させる、高さ3メートルにも及ぶ立体を制作することが明かされました。この中にロボットアームが取り付けられ、身体が操作されるそうです。
このイメージ図を見て、アドバイザーの庄野祐輔さんは「とてもインパクトがある」とその大胆な形状に驚いている様子でした。同じくアドバイザーの原久子さんは、素材について質問します。岸さんは「アルミかステンレスのどちらかと想定しています」と答えました。

文楽との共通性
成果発表イベントでの展示は、デバイス本体とキャプション、そして岸さんが実際に装着して動かされている映像をモニターで流す予定です。動きの生成については、内臓というコンセプトと関連させるために、アスリートがパフォーマンス測定に使うピルセンサーを岸さんが体内に飲み込み、内臓の温度を計測する予定とのこと。それに対して原さんは「もし体内のデータを参照するのであれば、気温やその時の過ごし方によってストーリー性を持たせることも考えられるかもしれない」と付け加えました。
次に、今後の展開についても岸さんから現状のイメージが語られます。「中間面談では、文楽を参考にしたらいいんじゃないかとおっしゃっていただきました。文楽について詳しくないんですが、例えば『曾根崎心中』は、主人公が運命に抗う物語で、その物語の枠が人形が操作される文楽と形式的に重なっていますし、人間がAIに操作される僕の外骨格デバイスとも相性がいいんじゃないかなと。今後文楽をどう作品に取り入れられるか検討していきたいです」。

これはアート? それともテクノロジー?
一連のプレゼンテーションを受け、庄野さんは所感を述べます。「作品性と技術的な実験性が合体しているので、個人的にどちらの目線で見たらいいのかみたいな違和感を感じたので、どちらかに振り切ったほうがすっきりすると思います」。
それに対し岸さんはピエール・ユイグを引き合いに出しながら、自分はユイグのように技術を開示しないのではなく、むしろ技術について言及していきたいと明言し、続けて自身の将来的な作家像を語ってくれました。
「僕は工学系出身なので、テクノロジーに対する興味が根本にある。だからピュアなアーティストという自認もないんですね。ただたまたまAIに早くから触れていて、その流れもある程度理解したうえで、身体的なAIというまだ世の中にはないものをつくって、試してみたいんです。だから、作品がアートなのかテクノロジーなのか分かりづらいという問題についても、特に意識していない面があります。それはアウトプットが堆積してくれば見えてくるものだと思っています。そのために資料も残しつつ、やることをやっていきたい」。
こうした長期的な展望を語る一方で、岸さんにとって今回のプロジェクトは、これまで言語を介したAIとのコミュニケーションによって制作をしてきた流れのなかで、それとは異なるアプローチであり、制作の「ステージを上げるために取り組んでいる」と中期的な目標設定も具体的です。面談の終盤には進行中の舞台芸術とのコラボレーションや、シビック・クリエイティブ・ベース東京 [CCBT] のプログラムについても話題に上りました。
このように積極的に活動を展開する岸さんですが、『xoxo-skeleton』での実験はこれらとどのように関係し、キャリアに影響を与えるのでしょうか。原さんは「代表作にしてほしい」と激励しました。

→TO BE CONTINUED…
立体を制作し、その中でのパフォーマンス映像を記録する。文楽などのリサーチをしながら、作品の次の展開を探る