令和7年度の創作支援プログラム、中間面談は前年度に続き、クリエイターとアドバイザーが一堂に会して行われました(一部のクリエイターはオンラインで参加)。ほかのクリエイターの発表を聞き、担当アドバイザー以外からもレビューをもらえる貴重な機会。各クリエイターとも5分のプレゼンテーションと、15分のアドバイスの時間が設けられ、活発な議論が繰り広げられました。面談後には懇親会も開かれました。本記事では発表グループ②の様子をレポートします。
合同中間面談 発表グループ②
日時:2025年11月17日(月)
時間:14:00~17:30
会場:コンワビル(中央区築地)会議室
アドバイザー:石橋素(エンジニア/アーティスト/ライゾマティクス)/織田笑里(404 Not Found ジェネラルマネージャー/チョコとマシュマロ合同会社代表)/西川美穂子(東京都美術館学芸員)/米光一成(ゲーム作家)/若見ありさ(アニメーション作家/東京造形大学准教授)
泉田剛『Texture Displaced 解体による建築的モデルとマテリアルのズレ』


泉田剛さんは初回面談後、青森県にある農機具小屋をDIYで解体しながら、出てきた部材を整理し、どのような形状に再構成するか検討を重ねました。その結果、小屋の敷地内にあった石垣の石の形をモチーフにすることに。ドーム型の構造物を制作し、12月に青森県立美術館コミュニティギャラリーで展示します。また、将来的には遺跡のようなモニュメントが点在する農村風景をつくりたいというビジョンを報告しました。この取り組みを長期的なものにしたいと考える泉田さん。

石橋さんと西川さんからは、別の場所でも展開していくに当たって、何をモチーフにしてその場に残すのかというメソッドの重要性が伝えられました。また、米光さんは「今回は親族の物件だからスムーズに進められている」と指摘。「次作以降、地域の人々が参加したいと思うような何かもうワンフックがほしい」と話しました。石橋さんは「解体している人の写真や特産のリンゴの写真などに魅力を感じた。将来的なビジョンはもちろん、解体や地域のストーリー込みでの魅力もあるのでは」と話しました。織田さんも「解体する中で、今まで語られなかった過去何百年の物語が語られる状態になることに意味があるのではないか」と話し、それを次のステップに生かす可能性を伝えました。
小野龍一『VoF』(仮)


小野龍一さんのオリジナル技術「Tangible VFX」(通常は映像(2次元)で見るVFXのような効果を実体(3次元)で見えるようにする技術)の拡張を試みる本作。Tangible VFXを用いた立体物を量産して作品を制作します。初回面談後にコンセプトを練り直したという小野さんは、81個の立体物を曼荼羅のように並べて見せたいと話しました。発注している機材が届き次第、プロトタイプを制作していきます。「複数個を並べると振動の問題が出てくると思うので、どう解決するか検証したい」と話しました。音楽は展示の際にリアルタイムで生成する予定です。12月に大阪で展示を行い、そこで得た鑑賞者の反応などを今後に生かしていきます。

作品表現が繊細であるため、織田さんは「展示にインパクトを与える工夫について、環境音の効果的な使い方も含めて検討を続けてみては」と話しました。石橋さんは「視覚的なトリックの面白さが十分ある中で、曼荼羅を取り入れるとかえってややこしくなるのでは」と懸念します。西川さんと米光さんも同様の意見で、現象の魅力をシンプルに伝えるコンセプトを模索してほしいとアドバイスしました。さらに若見ありささんは「鑑賞者が直接的にTangible VFXを浴びられる方法はないか。その方が、実体が明確に伝わるのでは」と提案。小野さんは、12月の展示で安全面を見極めながら、体験型の展示についても検討していく予定です。
小宮知久『合成言語「KOE語」を歌うための装置《koekko》』


移動型装置「koekko」の構造を検討し、徐々に定まってきたという小宮知久さん。koekkoの概念図を紹介しました。中心部分にはGPSや温度、湿度などのセンサーのほかスピーカーとマイクを組み込みます。周りに広がる布にはピエゾセンサーを仕込み、風やパフォーマーの声で布が揺れるとkoekkoの声が変調していく仕組みになりそうだと話しました。パフォーマンスは、パフォーマーとkoekkoの声が一体となり、協働しながら歌を立ち上げるものを想定しています。今後はプロトタイプの制作と実証実験を行い、2月にフィンランドでパフォーマンスとデモンストレーションを行う予定です。

初回面談で移動型装置がセンサーの役割をすると良いのではないかと話していた担当アドバイザーの石橋さん。具体的な装置の姿が見えてきたことに期待を示した一方で、ピエゾセンサーによって布の動きがうまく数値化できるかどうかは気になると話しました。米光さんは、人工言語の分野で二重性というキーワードには目新しさが感じられないと指摘。よりワクワクするような新鮮な視点が加わると良いと話しました。若見さんは、「民謡などのように、言葉から歌が立ち上がる瞬間には身体性が伴うのではないか」と話し、観客(地元の人)が参加して歌ったり踊ったりするようなパフォーマンスのあり方も示唆しました。
葉山賢英『HEIMA』



初回面談ではゲームの物語を中心にアドバイザーと意見を交わした葉山賢英さん。面談後は物語の設定を見直したほか、まずはパズル要素などの遊びの部分をしっかりつくるため、ビジュアルのクオリティを上げて、BGMを実装したとのこと。中間面談では、ゲームの冒頭部分をデモンストレーションし、ゲームの世界観やゲーム内で物体を転送させる操作の様子を紹介しました。今後は、成果報告イベントに向けてゲームのデモ版を制作していきます。

BGMを実装したことで世界観が分かりやすくなった、と織田さん。初回面談で議論した物語の構成や、伏線などについての進捗を尋ねました。物語の構成への質問は、若見さんからも。葉山さんは、登場人物のトラウマや巨大企業の陰謀など、物語にさまざまな要素を加える予定だと話しました。米光さんは、パズル要素の難易度について指摘。パズルが難しいと物語が進まず、逆に易し過ぎると物足りなさを感じるプレーヤーもいるかもしれないと言います。子供も楽しめるゲームをつくりたいと考えている葉山さんは「パズルの難易度はある程度下げて、物語を楽しんでもらえるようにしたい」と話しました。
HIHAHEHO Studio(代表:mgr allergen0024)『swandive』


4章構成のノベルゲームを制作中で、現在は1章の半分までつくったところだと話すHIHAHEHO Studio。デモンストレーションを行いながら進捗を報告しました。「初回面談後、複数ウィンドウの演出について検討し、ウィンドウが動いたり、増えたり減ったりする仕組みを追加した」と話しました。UIなどのビジュアルを洗練させることと、プレイヤーをのめり込ませるためのインタラクティブな要素をどのように入れていくかが課題だと言います。今後は全体的にデザインを一新し、成果報告イベントまでに1章を完成させる予定です。

西川さんは、「同じ出来事に対して異なる認知が発生するというのが今回のテーマ。異なる見え方を表現するのに、モニターの中の固定したウィンドウが機能しているかどうかにはまだ課題を感じる。それぞれの登場人物の心理に合わせてウィンドウの中の画角を変化させるような表現もありえるのではないか」と話し、米光さんも「複数ウィンドウと多視点が本作の肝だと思ので、作品の冒頭や最後でクリティカルな表現は欲しい」と期待を込めて伝えます。織田さんは「物語の展開に合わせて複数のウィンドウが連動していくのは効果的な演出になりそうだ」と話しました。
眞鍋美祈『「視ることの触覚的な交差」に関する連作の制作・発表』


見る・見られる関係性や触覚を伴う視覚などを追求し、作品化を試みる眞鍋美祈さん。中間面談では、連作としてつくりたい4作品を、作品で扱う相互関係の距離が近いものから遠いものまで(隣同士から地球と月の距離まで)順にスライドで紹介しました。それぞれプロトタイプや実制作に取り組んでおり、今後はさらに自分の感覚を捉え直しながら、表現を工夫していきたいと話しました。

担当アドバイザーの西川さんは「距離を軸にして整理したことで、連作のイメージが伝わりやすくなった。視覚と触覚が結びつくという眞鍋さんの独特の感覚が、作品の面白さにつながっていくと思う」と話し、このまま実験を続けてほしいと助言しました。米光さんも「感覚をテーマにしているので、考えるだけではなく実験的にやってみてフィードバックを得ることで進めていけるのでは」と話しました。また、3作目の作品(飛行機を眺める視線と飛行機から地上を見る視線を結び付けるスマートフォンアプリ作品)が、テーマと直結していて分かりやすいという意見が複数のアドバイザーから出ました。若見さんは、感覚をどう作品に落とし込むかが肝心だと話し、3作目のような分かりやすい作品を交えながら連作を展開していくのも一つの方法だと話しました。
宮嶋龍太郎『国産次世代ピンスクリーンの開発とアニメーション制作』


宮嶋龍太郎さんは、9月に完成したアニメーション作品『REST』が、第22回アニマテカ国際アニメーション映画祭2025(スロベニア)の特別ピンスクリーン回顧展で上映される予定だと報告しました。また、ピンスクリーンを現代に復興させる活動をしているフランスの工房が、本プロジェクトにも協力してくれていると言います。現在、ピンスクリーンの本制作にあたって70社以上から見積もりをとり、納期や費用を検討しているところです。「課題は、基盤に60万本の針を入れる作業に時間がかかること」と話す宮嶋さん。時間短縮のための治具の開発をフランスの工房と進めています。成果発表イベントでは、プロトタイプや、過去の絵コンテをピンスクリーン化したものを展示したいと話しました。

基盤に針を入れる作業の外注には、時間だけでなく費用も膨大にかかることが分かったと話す宮嶋さん。米光さんと若見さんは、単純作業であるその作業を希望者に手伝ってもらう案の実現可能性を尋ねます。「フランスの事例では、みんなでクロワッサンを食べたり世間話をしたりながら針を入れていて、楽しそう」と宮嶋さん。安全面や高価な基盤の破損リスクさえ解決できれば、ワークショップやパフォーマンスを行いたいと話しました。織田さんは、「どうして宮嶋さんがピンスクリーンに魅了されたのかというストーリーも重要だと感じた。展示ではそこも伝えた方が良いのではないか」と話しました。
山中千尋『永遠に呼吸する風景−アニメーションによる、今この一瞬にある天国−』


絵画が完成へ向かう過程で、絵の具の混ざり合いの中に生成される風景を起点に、生成AIとの共創による新たな里山表現を模索する山中さん。現在は2つの方向性を試行しています。1 つ目は既存のAIモデルを使い、AI と自分が絵を描き重ねていく方法、2つ目はAIモデルが自身の絵を学習し生成を行う方法です。それらの試行から、自分の記憶にない風景や抽象表現の可能性などの新しい発見がある一方で、AIの美的感覚の中に誰か別の人間の意志が見え隠れすることや、他者の絵画を学習させることへの後ろめたさといった課題も見えてきました。「AIとどのような風景をつくりたいか、またAIは私と共創して何が嬉しいかという問いに立ち戻って考えたい」と言い、12 月までに手法を決定したいと話しました。

「2つ目の手法の方が自身の絵に合わせやすく、可能性を感じている」という山中さんの話に石橋さんも同調したものの、学習データの素材づくりやAIモデルを作成できるエンジニア探しが難しそうだと話しました。西川さんは、「AIが喜ぶ」という捉え方に疑問を投げかけ、「混ざり合うという感覚が、AIとの学習の繰り返しの中で本当に再現できるのか」と慎重に考える必要があると伝えました。若見さんは、初回面談からの試行の積み重ねを評価し、成果発表ではその過程も併せて展示すると良いのではないかとアドバイスしました。
懇親会



中間面談後に行われた懇親会には、クリエイターとアドバイザー、事務局スタッフなども参加しました。クリエイター同士、またアドバイザーとの貴重な交流の機会になりました。